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奨学金債務は自己破産できるが任意整理は難しい理由



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奨学金を返済できなくなる人が増えています。
日本学生支援機構奨学金返還者の自己破産件数で返済債務が免責となったのは、2012年度~2017年度の合計で18,753件に達しています。もともと、高等教育を受けるために借りた奨学金ですが、その返済に困って自己破産するというのは若者の将来の夢が閉ざされることを意味します。自己破産のダメージは他人が想像する以上に大きなものだからです。
そこで、奨学金を返済できなくなった時に直ぐに自己破産を考えるのではなく、任意整理など他の債務整理方法を選択することはできないのでしょうか?


奨学金破産が急増/追い込まれる貸与者本人
https://blogos.com/article/353634/


奨学金返済に行き詰まる人が増えている

現在、大学・短大・大学院・専門学校等の学生の約3人に1人が日本学生支援機構奨学金を利用していると言われますが、2017年3月に貸与が終了した大学学部生の平均貸与額は無利子枠で241万円・有利子枠で343万円となっています。
学生の主な貸与理由は授業料の支払いや生活費の補てんですが、大学・短大・大学院・専門学校等を卒業して社会に出るフレッシュマンにとり、200万円~500万円程度の借金は少ない負担ではないでしょう。
通常、カードローンやクレジットカードで借金した場合、100万円を超えてくるとサラリーマンが一人で返済するのは難しいと言われています。もちろん、奨学金とカードローンやクレジットカードでの借金とでは、前者が年率1%程度の金利に対し後者は年率15%~20%の金利ですから金利負担は明らかに違います。
しかしながら、社会に出たばかりのフレッシュマンにとっては、元金200万円~500万円程度の借金を返済するだけでも大変な苦労が伴います。自身のフレッシュマン時代を思い出せば誰もが解ることです。
その結果、日本学生支援機構奨学金返還者の自己破産件数が増加しており、その数は2012年度~2017年度の6年間で計18,753件に達していることは悲惨な現実です。
これは奨学金の借り手である学生達だけに問題があった結果なのでしょうか?
或いは、貸し手である日本学生支援機構にも問題はあるのでしょうか?


現在の奨学金制度の問題点

奨学金制度の問題点を考える前に、そもそも、学生が奨学金に頼らなければならない背景について触れておきます。学生が奨学金に頼らなければならない最大の要因は、この数十年の間の大学などの学費が異常に高騰したことがあります。
例えば、学費が比較的安いといわれる国立大学の初年度納付金は、1970年に16,000円でしたが2010年には80万円を超えました。また、私立大学の初年度納付金の増加率は国立大学ほどではありませんが、国立大学の初年度納付金を大きく上回ります。

その結果、奨学金に頼る学生が増えている訳ですが、現在の奨学金制度の問題点の1つ目は諸外国の奨学金が「給付」であるのに対して、我が国のほとんどの奨学金は貸与であることです。つまり、奨学金は借金であり返さなければならないものであることが、
我が国の奨学金制度の根本的な問題点と言えます。

奨学金制度の問題点の2つ目は2004年に奨学金事業は日本育英会から、現在の日本学生支援機構に引き継がれたことです。日本学生支援機構では奨学金を金融事業と位置付け、回収がどんどん強化されてきました。
そして、金融事業と位置付けたことで延滞が3ヶ月になると延滞情報が個人信用情報機関ブラックリストに登録され、延滞4か月になると債権回収業者による回収が行われています。さらに、延滞9か月になると支払督促という裁判所を利用した手続が行われています。つまり、現在の奨学金の延滞者はカードローンやクレジットカードの延滞者と同列に扱われているのです。

奨学金制度の問題点の3つ目はいわゆる「繰り上げ一括請求」と言われる請求方法です。「繰り上げ一括請求」とは一定期間返済が滞ると本来の返済期限が来ていない将来の割賦金を含め、全ての残債を一括で請求するというものです。
そもそも、月々の返済に困っている債務者に対して、将来の分まで一括して請求するのは消費者金融会社でもやらない厳しい取り立てです。特に、「繰り上げ一括請求」の規程では「返還能力がある人が返還を著しく怠った時」に適用するとされていますが、
現実は明らかに返済能力がない人にもこのような請求がなされています。
これでは日本学生支援機構奨学金の自己破産者を増やしている様なものです。

問題点の4つ目は高校時代に申し込む奨学金予約採用の割合が年々増加していることです。つまり、18歳という未成年の段階で何百万円もの金銭貸借契約を結ぶ訳で、予約採用の募集が日本学生支援機構から各高校に丸投げされているのも問題です。
担当教員による情報格差や制度周知に関する温度差なども当然、考えられますから、
日本学生支援機構の貸し手責任が問われるシステムとも言えます。


奨学金返済不能で任意整理できるのか?

それでは、奨学金の返済不能に陥った場合に債務整理はできるのでしょうか?
まず、債務整理の入口と言われる任意整理について考えます。
そもそも、任意整理とは返済に窮した債務者と銀行や消費者金融会社などの業者が任意に行う和解交渉ですが、債務を出来る限り圧縮した上で5年程度で完済を目指すのが任意整理の特徴となっています。
ところが、もともと、奨学金金利が年率1%程度と非常に低い金利となっていますから、金利を減免しても総返済額はそれほど減りません。しかも、5年程度で完済を目指すということになると、現実的には当初よりも返済が厳しくなってしまいます。
したがって、奨学金の返済不能のケースには任意整理は馴染まない方法と言えます。
ただ、任意整理はどの債務を任意整理の対象にするかを選択できますから、他の債務がある場合は優先的に任意整理し奨学金だけを残すという選択は可能です。
また、奨学金の滞納が長期に及んでいる場合で残金の一括返済を求められている場合は、弁護士や司法書士を立てて一括返済に対する任意整理を求めることは考えられます。つまり、一括返済を3年~5年の分割返済にするなどの交渉が考えられます。


奨学金返済不能は自己破産しかないのか?

それでは、奨学金の返済不能に陥った場合は自己破産しかないのでしょうか?
まず、日本学生支援機構奨学金には「返済期限猶予制度」と「減額返済制度」がありますから、返済不能に陥った場合は2つの制度に該当するか否かを検討する必要があります。そして、これらの「返済期限猶予制度」と「減額返済制度」でも救済できないケースについては、自己破産を検討することになります。
ただ、奨学金を借りる際に連帯保証人を立てている場合は、本人が自己破産すると連帯保証人が返済を求められることになります。したがって、奨学金を借りる際に連帯保証人を立てている場合は、連帯保証人と相談して自己破産するか否かを決める必要があります。いずれにしても、非常に困難な選択をすることになりますが、自己破産して全ての借金をリセットすることも1つの選択肢と言えます。
安易な自己破産はモラルハザードを助長することになりますが、日本学生支援機構奨学金については貸し手責任が明確になっておらず、債務者の選択肢としては自己破産を除くことはできません。
特に、高齢者の自己破産はリカバリーが難しい側面がありますが、若い人の自己破産はリカバリーが十分可能です。また、自己破産によって仕事を辞める必要はありませんから、債務整理が得意な腕利きの弁護士や司法書士に依頼して密かに自己破産すればよいのです。自己破産のダメージは他人が想像する以上に大きなものですが、将来の全ての夢が無になる訳ではないからです。

迫る!奨学金返還猶予期間の終了。返済のためブラック企業辞められない人も
https://www.businessinsider.jp/post-183155

2020年春から奨学金の制度が見直し!賛否両論ある中で返済中の金融ライターが思ったことhttp://www.cashing-taizen.com/column-syogakukin2.html