借金を考察するブログ

「債務整理の森」の執筆担当が借金ニュースについて考察するブログ

親の借金・マイナス相続に対する大きな誤解

時代劇を見ますと親の借金のかたに娘を差し出し娘が女郎屋に売られるというシーンを見ますが、現在は貸金業法などで厳格に利用者保護が徹底され業者が規制されていますので親の借金を子供が肩代わりする必要は全くありません。そのことは一般的に常識になりつつあると言えます。
しかしながら、親が借金を抱えたままで亡くなった場合については、手続方法などが意外に知られていないのが現実です。つまり、世の中には親の借金に対する大きな誤解があると考えられます。そこで、親の借金に対する正しい知識と手続を以下で確認します。


田舎の実家 「相続」すべきか「放棄」すべきかの見分け方
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54062

見知らぬ借金を背負うかも…「負債相続」で泣く前に知っておきたいこと
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54679


増える下流老人と高齢者の自己破産

 

増える下流老人
生活困窮者支援を行っているNPO法人ほっとプラス代表理事である藤田孝典さんが「下流老人」という著書を出版して久しいですが、今では下流老人という言葉が広く一般的に使われるようになりました。60歳から64歳を対象とした内閣府調査の「世帯の高齢期への経済的備え」によりますと、貯蓄額が十分だと答えた人は全体の3.6%にとどまりかなり足りないと答えた人は35.5%に上ります。
世界の先進国に於いては経済的な格差が拡大しており、特に、高齢者は同様の傾向を強めています。

この様に全体の3割が下流老人になる可能性があると言えますが、普通の生活を営んでいる人が下流老人に転落するきっかけとしては以下の要因が考えられます。
最も多いのは病気やケガによる出費の増大がきっかけで貧困化するケースで、次に老人ホームに入れないことによる貧困化も増えています。
また、子どもの面倒をいつまでもみることによる貧困化や、老々介護による貧困化や熟年離婚による貧困化も増えているのです。
現在、下流老人になりやすい人は低所得者層が多いと思われがちですが、意外に多いのは現役時代の年収が600万円~700万円の中流以上の世帯ということです。この世帯は収入以上の生活をしている場合が多く、住宅ローンの支払いや子供の教育やマイカーなどでさまざまな出費がかさみ節約する癖がついていません。
したがって、老後の備えができておらず結果的に下流老人になりやすくなってしまいます。平成28年度の「家計の金融行動に関する世論調査」によりますと、年金生活に入るまでに最低限準備すべき貯金額の平均は2,016万円と言われています。

増える老後破産
その様な環境下で2016年から個人の自己破産の申立件数が前年比でプラスに転じ、2017年の自己破産申立件数(速報値)は前年比6.4%増の68,791件で2年連続で大幅に増えています。しかも、自己破産に占める高齢者の割合が増えています。
自己破産者に占める70歳以上の割合は2005年の3.05%から急増し、2014年は全体の8.63%を占めているとのデータが示されておりこの傾向は2015年以降も続いている筈です。また、60歳以上を見ますと1997年に12%だった60歳代の自己破産者は2014年には6.7ポイント増の18.71%に増えており、自己破産者の5人に1人は60歳以上という時代に突入しているのです。

そんな中、生活保護を受給している世帯数は増え続けており、厚生労働省の発表によりますと2016年12月時点では164万205世帯で過去最多となっています。
この様に生活保護が増加している要因として考えられることは1人暮らしの高齢者世帯の増加が原因のようで、生活保護世帯のうち65歳以上の高齢者世帯の数は83万8,386世帯で生活保護世帯の半数以上が高齢者世帯という実情となっています。
現在、団塊の世代後期高齢者に入る年齢に差し掛かっており、今後、高齢化の進展とともに下流老人などの高齢者の自己破産は増加する傾向を強めそうです。


親の存命中は親の借金を子供が返済する義務はない

 

したがって、今後、借金を抱えたままで亡くなる老人の数が増えることは間違いないことで、親の借金が配偶者や子供など家族に与える影響についてポイントを知っておく必要が出て来ます。
そこで、まず、親の存命中の借金についてですが、親の存命中の借金については配偶者や子供が返済する義務がないことは一般的に知られていることです。
ただし、親の借金について親の配偶者や子供が保証人になっている場合は別で、保証人は保証した債務を返済する義務があることは言うまでもないことです。
また、親が経営する会社の代表取締役で子供が取締役の場合に、その会社が債務超過の状態だったとします。この様なケースでも多くの場合、子供である取締役が債務を肩代わりする必要はありませんが、レアケースとして取締役の業務への関わり方などで取締役が債務を返済する義務を負う場合が有り得ます。


親が亡くなると親の借金の請求が来る

 

親の借金に対する考え方
ところが、借金を抱えた親が亡くなると、一転して法定相続人に対して親の借金の請求が来ることになります。まず、「遺産-借金」で遺産が多い場合を考えると構図を理解し易くなります。例えば、父親の遺産総額が5億円で借金1億円を残して亡くなった場合、5億円の遺産から借金の1億円を返済し残りの4億円を相続することになります。
それでは、「遺産-借金」で借金が多い場合はどうなるのでしょうか?
例えば、父親の遺産総額が1億円で借金5億円を残して亡くなった場合、この場合も考え方は同じで借金5億円から遺産の1億円を差し引いた4億円の借金を相続しなければなりません。つまり、法定相続人が共同で4億円の借金を返済しなければなりません。
それを免れるためには相続放棄しかありません。

音信不通や失踪中の親が亡くなった場合
一般的に音信不通や失踪中の親が亡くなった場合の借金については子供に責任は無い様に考えがちですが、法律は音信不通や失踪中の親が残した借金であっても法定相続人に対して請求権が残ると規定しています。
つまり、このケースでも親が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に相続放棄するしかありません。最近、一人暮らしの高齢者が亡くなり家族・親族がいるにも関わらず、
遺骨や遺品の引き取りを拒否するケースが増えています。
しかしながら、この様なケースで故人に借金が残っていた場合、法定相続人が何もしないで無視を決め込むと後で金融機関から請求を受ける可能性が出てきます。
したがって、面倒なのは理解できますが、たとえ音信不通や失踪中だったとしても、
遺骨はともかく遺品の引き取りは受けた方が良さそうです。
遺品を整理すれば故人の生活が偲ばれますので、借金の有無なども確認できる筈だからです。


マイナスの遺産相続を避けるには相続放棄しかない

 

相続放棄のポイント
上記の様なケースを含めてマイナスの遺産相続を法的に完全に避けるには、相続放棄しか方法がないということになります。正式に相続放棄の手続を行なえば大手の銀行であろうと消費者金融会社であろうと、故人の残した借金の支払いに応じる必要は一切なくなります。そこで、相続放棄のポイントですが一番大事なことは、相続放棄は自身が相続人であることを知った日から3ヶ月以内に手続きをしなければならないということです。また、相続放棄は手続のタイミングや法定相続人に入るか否かなど、微妙な問題を含みますので相続放棄が専門の弁護士に任せることが大事です。
その上で相続放棄のポイントの1つ目は相続放棄は、自分が相続人であることを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述をする必要があるということです。
また、2つ目は相続人のうちの誰かが相続放棄をすると、法律で定められた相続の順位が変わってしまうことがあるということです。
3つ目は相続する財産を選ぶことはできず「全て相続する」か「全て放棄する」の二者択一しかありません。

法廷相続人の範囲
そして、法廷相続人の範囲とは民法が「相続の際に遺産を受け取れる権利がある人」と認めている一定の相続人のことを意味し、被相続人の血縁者を4つのグループである配偶者・子・親や祖父母・兄弟姉妹に分けて相続の際の優先順位を決めています。
この時、被相続人の法律上の配偶者は常に法定相続人になりますが、この配偶者と一緒に法定相続人になれるのは残りの3グループの血縁者のうち最も順位が高い1グループのみとなります。また、それぞれのグループによって民法の定める遺産の取り分(法定相続分)が異なります。

相続放棄が認められると
家庭裁判所により相続放棄が認められると「相続放棄申述受理通知書」という書類が家庭裁判所から送られてきますが、借金の債権者に対して家庭裁判所がその旨を通知してくれるわけではありません。つまり、「相続放棄申述受理通知書」を債権者に提示する必要が出て来ます。また、債権者によっては家庭裁判所で別途発行される「相続放棄申述受理証明書」を求めてくる場合も考えられます。


今後、ますます増えるマイナス相続

 

既に述べました様に、今後、ますます、高齢者の破産が増えることは間違いありません。したがって、今まで債務者本人が死亡することで債権の回収を諦めていた金融機関や債権回収会社が、背に腹は代えられぬということで、故人の法定相続人に当たる人達への請求を増やすことが考えられます。したがって、経済格差が広がり下流老人が増える中で、今後、マイナス相続問題の拡大が懸念されます。
マイナス相続を防ぐ手立ては相続放棄しかありせんので、相続放棄をしっかり理解し血族や親族の情報収集を含めて相続放棄に対する準備を考える必要があります。

 

シングルマザーのリアルなブログ・元夫の葬儀後~相続放棄
2人の幼い男の子を持つシングルマザーの生活を、お金・育児・仕事・生活などすべて詳しく書き込みます。大変だけど、毎日幸せです。
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