借金を考察するブログ

「債務整理の森」の執筆担当が借金ニュースについて考察するブログ

奨学金自己破産増加は日本学生支援機構のお役所仕事が原因だ

奨学金に絡む自己破産者が増加しており人数は2016年までの5年間だけでも15,338人に上ります。内訳は本人が8,108人で保証人が7,230人に上り2016年度は過去最高の3,451人が自己破産しました。表現が悪いかもしれませんが、本来、自己破産はある意味で社会の負け組の行きつく先です。
つまり、自己破産は長い社会人生活で借金を抱えた人の行きつく先である筈で、様々な仕事やチャンスに挑んだ結果である筈です。ところが、奨学金自己破産は新たな社会人生活に胸を躍らせる筈の若者が、何のチャンスも与えられることなくいきなり突きつけられる足かせの様なもので大切な人生の将来の選択肢までをも制限してしまいます。
この様な奨学金は本末転倒で本人に原因の一部はあるにしても、原因の大部分はお役所仕事を続ける日本学生支援機構にあると考えるべきです。そこで、奨学金自己破産増加の原因について考えます。


奨学金に絡む自己破産者は15000人以上 増加傾向にあり
http://blogos.com/article/281121/

奨学金を返済できず自己破産する人が相次ぐ 『ノンストップ!』で柴田武男氏が解説
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12184-38538/


日本学生支援機構の本質とは?

 

2004年に日本育英会・財団法人日本国際教育協会・財団法人内外学生センター・財団法人国際学友会・財団法人関西国際学友会が合併し、独立行政法人日本学生支援機構が設立されました。現在、日本学生支援機構では主に学生に対する貸与奨学金事業や留学支援や外国人留学生の就学支援を行っています。
理事長は遠藤勝裕(日本銀行出身)で主務大臣は文部科学大臣・主務省所管課は文部科学省高等教育局学生・留学生課です。つまり、独立行政法人日本学生支援機構はれっきとした役所なのです。

それでは独立行政法人とは何かと言いますと独立行政法人は省庁から独立した法人組織であって、行政の一端を担い公共の見地から事務や国家の事業を実施し国民の生活の安定と社会および経済の健全な発展に役立つものと規定されています。
つまり、独立行政法人は省庁から独立していると言いながら、主務官庁が独立行政法人の中長期計画策定や業務運営チェックに携わっています。
この独立行政法人という組織は1990年代後半の橋本龍太郎内閣の行政改革の一環として、中央省庁から現業・サービス部門を切り離す目的で行なわれました。
しかしながら、内実は当時、天下り先として批判された特殊法人を、行政改革に名を借りて改組し独立行政法人にした訳です。したがって、日本学生支援機構奨学金と聞くと旧日本育英会奨学金のイメージですが、実際には全く別ものになっているのです。
また、現在、国立大学法人となった国立大学も広義の独立行政法人とみなされており、
独立行政法人となってから授業料の大幅な値上げが行われ奨学金自己破産増加の背景となっています。


現在の奨学金の仕組み

 

まず、現在の奨学金は2つに分かれています。2つとは返還型の奨学金制度と給付型の奨学金制度で、言う間でもありませんが将来、返済しなければならない奨学金と返済する必要のない奨学金に分けられます。
ただ、給付型の奨学金制度は新制度として始まったばかりで、募集対象者は住民税非課税世帯(市町村民税所得割額が0円)の人か生活保護受給世帯の人に限られます。
現在の給付月額は国公立大学で2万円~3万円・ 私立大学で3万円~4万円となっています。

一方、奨学金の大部分を占める返還型の奨学金制度には、無利子奨学金制度と利息が付くタイプに分類されます。対象者の基準は例により事細かく規定されていますので、ここでは割愛しますが金額は以下の通りです。
無利子奨学金
国公立大学・自宅通学の場合  月額30,000円または45,000円
国公立大学・自宅外通学の場合 月額30,000円または51,000円 
私立大学・自宅通学の場合   月額30,000円または54,000円
私立大学・自宅外通学の場合  月額30,000円または64,000円 

利息が付くタイプ
大学                    月額30,000円・50,000円・80,000円・100,000円または120,000円
私立大学の医・歯学の課程の場合は120,000円に20,000~40,000円の増額が可能です。

以上の様に日本学生支援機構奨学金にも様々なタイプがありますが、利息が付くタイプの大学の場合で毎月12万円を借りると4年間で576万円を借りることになります。
しかも、この金額に利息が付くことになります。


大学学費高騰の背景

 

奨学金自己破産増加の根本的な原因の1つは大学の学費の高騰にあります。
国立大の授業料は2017年時点で年間約53万円と過去40年で15倍近くに上がっています。1975年の国立大学の初年度にかかる費用は86,000円だったのに対し、2016年には817,800円と約73万円も高騰しています。また、私立大学では1975年に278,261円だったのが2016年は1,131,196円と約85万円も高くなっています。
この様に入学金も含め4年間の支払い額は家計に大きな負担がかかりますから奨学金に頼る学生が急増した訳で、大学の授業料が高騰しそれに応じて奨学金の借入金額が大きくなり返済が困難になっているのです。
そして、大学の授業料の高騰の始まりは国立大学が国立大学法人(広義の独立行政法人)となってから、授業料の大幅な値上げが行われ奨学金自己破産増加の背景となっているのです。どうして、国立大学までもが独立行政法人にならなければならなかったのか、この辺りに大きな政策判断の間違いがあったと考えられます。


苦しい奨学生たちの生活

 

それでは、日本学生支援機構(JASSO)から奨学金を借りた奨学生たちは、現在、どの様な生活を送っているのでしょうか?
現在、日本の勤労者の約3人に1人が非正規雇用であり低賃金・不安定な雇用が増加する中で、アルバイトを行なう奨学生たちの生活が苦しいことは直ぐに想像できることです。今期も日本の大企業は史上最高の利益を計上する見込みですが、内実は売上微増の中で費用を圧縮し利益を増やした内容で人件費も横這いです。
そして、大企業が費用を圧縮するということは下請け企業に対する材料費の圧縮に他なりません。つまり、大企業の社員の給料は微増か横這いの中で下請け企業の社員の給料は良くて横這い、勤労者の約3人に1人の非正規雇用やアルバイトの給料は削られるのが当たり前の世の中です。したがって、奨学生たちの生活が苦しいことは間違いなく奨学生たちの親世代も楽ではないのです。

また、大学生の学生生活を支える家計からの給付は、2000年度に156万円であったものが2012年度には121万円にまで落ち込んでいるという調査結果も出ています。
したがって、このような状況で大学に行こうとすれば奨学金に頼らざるを得ず、今や大学生の約4割が機構の奨学金を借りているのが現実です。
その結果、返済困難に陥るリスクは飛躍的に高まっており、日本学生支援機構によりますと返済の滞納が3か月以上続く人は約16万人(2016年度末時点)に上り、延滞者の約8割が年収300万円以下であることが明らかになっています。
つまり、大学を卒業して社会に出たばかりの奨学生たちは給料で食べていくだけで大変な状況で、奨学金の返済の余裕などないのは誰が見ても明らかなことです。
実に「今後決められた月額を返還できる」と回答した人は3割強しかいないのが現状で、日本の奨学金制度は破綻の淵に近づいているのです。


日本学生支援機構サラ金と同じだ

 

奨学生がこの様な悲惨な状況に追い詰められている中で、当事者の日本学生支援機構(JASSO)は一体、何を考えているのでしょうか?
現実、奨学金事業は2004年に日本育英会から日本学生支援機構に引き継がれましたが、
その際、機構内で奨学金は「金融事業」と位置づけられ回収がどんどん強化されてきました。つまり、日本学生支援機構の学生支援というポリシーは忘れ去られ、奨学金制度が金融ビジネスとして独り歩きしていると考えられます。

その結果、奨学金の返済において延滞3か月になると延滞情報が個人信用情報機関のいわゆるブラックリストに登録され、延滞4か月になると債権回収業者による回収が行われていると言われています。また、延滞9か月になると多くの場合、支払督促という裁判所を利用した手続が行われ、その件数は2006年度の1,181件から2014年度には8,495件と飛躍的に増加しています。
これらの対応はサラ金が延滞者に対する対応と全く同じで、とても日本学生支援機構が奨学生たちに行う対応とは思えません。特に、奨学金の返済で延滞3か月になると、延滞情報がブラックリストに登録されているというのは悲しい対応です。
奨学生たちは奨学金返済という足かせに加えて、ブラックリストに登録という二重の足かせが課されることになります。

さらに、奨学生たちを追い詰めているのは、回収強化の中のいわゆる「繰り上げ一括請求」と言われるものです。「繰り上げ一括請求」は一定期間返済が滞ると本来の返済期限が来ていない将来の割賦金を含め元利合計を一括で請求するもので、月々の支払いさえできない奨学生が将来の分まで請求されて返済できる筈がありません。
もともと、「繰り上げ一括請求」は「返還能力がある人が返還を著しく怠ったとき」に行うとされていますが、実際には全く確認を行なわずに明らかに返済能力がない人にもこのような請求がなされています。
この様な実態を顧みない日本学生支援機構の回収強化策が奨学生を追い詰め自己破産を増やしているのが実態で、これでは日本学生支援機構サラ金と同じと言われても仕方がありません。


日本学生支援機構は本来の学生支援に立ち戻れ

 

本来、貸与型の奨学金は将来の仕事や収入が分からない状態で貸付を行いますから、
一般のカードローンなどに比べて貸し倒れリスクが高いのは当たり前のことです。
つまり、滞納の危険があることは最初からある程度は予想できたことですから、滞納に陥った場合にそれを救済する制度がなければなりません。
確かに、経済的困難にある人は年収300万円以下などを目安に返還を先延ばしにする「返還期限の猶予」という制度がありますが、利用できる期間は10年に制限されており中途半端で不十分な制度です。しかも、延滞がある人は延滞している元金と延滞金を全て支払わなければ救済制度の利用が制限されています。

つまり、現在、日本学生支援機構が行っている回収強化策はサラ金が滞納者に行う回収強化策と同じで、このままでは奨学生を自己破産に追い詰める制度と言わざるを得ません。日本学生支援機構は学生支援という制度の本来のポリシーに立ち戻り新たな回収策を考える時に来ています。天下り日本学生支援機構に来た現在の7人の役員たちに言いたいことは、「早くお役所仕事を止めて血の通った本来の学生支援策を考えろ」ということです。


奨学金返せず自己破産15000人」のニュースを隅々まで掘ってみよう
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=37748