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「自然災害債務整理ガイドライン」を知らない人は多いのが現実

最近、「50年に一度の大雨」などという表現をテレビの天気予報でよく聞きますが、
地球温暖化の影響なのか大雨・台風による洪水や山崩れなどの自然災害の被害が増えています。加えて地震大国の我が国は災害列島とも呼ばれますが、新築したばかりの家やマンションを失った人の無念さは計り知れません。
しかも、家を失った上に住宅ローンだけが残ってしまったとしたら・・・。こんな時に役立つ制度が2015年にできています。それは「自然災害債務整理ガイドライン」で、まだまだ、知らない人が多いのが現実ですが、少なくとも住宅ローンを抱える人は知っておけば万が一の時に役立つかもしれません。


災害で自宅が全壊。どうなる住宅ローン
https://news.biglobe.ne.jp/economy/1009/pre_171009_8103358494.html


災害で家を失った場合の住宅ローンの扱い

 

通常、大雨や台風による洪水や山崩れ、或は、地震で家を失った場合、いくつかの法律で救済・援助が行われています。また、民間の見舞金や義援金などが支給される場合もあります。しかしながら、失った家に住宅ローンが残っている場合、基本的に住宅ローンは返済するのが原則です。
もともと、家を失い新しい住まいにかかる住居費や家具の費用だけでも大きな負担になりますが、加えて元の自宅についている住宅ローンを払うとなると大きな負担になる訳でいわゆる二重ローンの状態です。
2011年の東日本大震災でも多くの人が家を失いましたが、住宅ローンを抱えて途方に暮れた人も少なくなかったのです。そこで創設されたのが被災者のローン負担を軽減する「自然災害債務整理ガイドライン」で、対象になるのは2015年9月2日以降に災害救助法が適用された自然災害によってローンを返済できない個人または個人事業者です。


災害救助法とは?

 

災害救助法の主旨は以下の通りです。
大雨や台風による洪水や山崩れ、或は、地震などの災害により、多数の住宅が被害を受け被災者の生命・身体への危害があり救護を著しく困難とする特別の事情がある場合、
被害が発生した被災地に対して都道府県が適用し自衛隊日本赤十字社に対して応急的な救助の要請・調整・費用の負担を行うということです。
これらの救助の費用は原則として各都道府県が負担し、都道府県の財政力に応じて国が負担する場合もあります。適用基準は第一に大きな被害を受けた世帯数が基準となっており、人口と被害を受けた世帯数により細かく決められています。
基準は都道府県と市町村の2つの適用単位があり、各自治体の人口ごとに定められた適用基準があります。これに加えて、へき地で発生した災害など救護が困難な事情がある場合に適用される場合があります。

また、同種の法律に激甚災害法がありますが激甚災害法は地震や風雨などによる著しい災害のうち、被災地域や被災者に助成や財政援助を特に必要とする場合に政令で指定され適用されます。
こちらも全国規模で災害そのものを指定する「激甚災害指定基準による指定」と市町村単位で指定する「局地激甚災害指定基準による指定」の2種があり、中央防災会議が定めた「激甚災害指定基準」「局地激甚災害指定基準」に基づいて判断されます。
激甚災害に指定されると国により災害復旧事業の補助金の上積みがなされることになります。
これまで激甚災害に指定された主な災害に、1994年の三陸はるか沖地震・1995年の阪神・淡路大震災・1998年の台風5~9号による暴風雨災害・2004年の新潟県中越地震
2007年の台風5号による暴風雨災害・2011年の東日本大震災などがあります。


「自然災害債務整理ガイドライン」の骨子

 

上記の様な自然災害により住宅ローンのほか自動車ローン・事業性ローンの返済が出来なくなった場合に、自己破産などの法的倒産手続によらずに、債権者と債務者の合意にもとづき債務整理を行う際の準則として取りまとめられたものが「自然災害債務整理ガイドライン」なのです。
この「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」は、平成27年9月2日に「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会」の設置後に被災された方を対象にしています。また、災害救助法の適用を受けた自然災害の影響を受けたことによって、住宅ローン・住宅のリフォームローンや事業性ローン等の既往債務を弁済できなくなった個人の債務者が対象です。


「自然災害債務整理ガイドライン」手続の流れ

 

「自然災害債務整理ガイドライン」の手続の流れは以下の通りです。
まず、最も多額のローンを借りている銀行などの金融機関等へ手続着手の申出を行ないます。金融機関により所定の借入先・借入残高・年収・資産・預金などの状況をヒアリングされます。           ↓
申出を行なった金融機関等から手続着手について同意が得られた場合、地元弁護士会などを通じ「自然災害被災者債務整理ガイドライン」運営機関に対し「登録支援専門家」による手続支援を依頼します。「 登録支援専門家」とは弁護士・公認会計士・税理士・不動産鑑定士を意味しますが、弁護士以外は一部業務を実施できませんので弁護士がベストです。                  ↓
弁護士などの「 登録支援専門家」が決まると、金融機関等に債務整理を申し出て申出書のほか財産目録などの必要書類を提出します。この債務整理の申出により債務の返済や督促は一時停止となります。これは通常の債務整理手続と同じです。
                                    ↓
弁護士などの「登録支援専門家」の支援を受けながら金融機関等との協議を通じて、
債務整理の内容を盛り込んだ書類である「調停条項案」を作成します。
                                    ↓
弁護士などの「登録支援専門家」を経由して金融機関等へガイドラインに適合する「調停条項案」を提出・説明します。「調停条項案」に対して金融機関等は1カ月以内に同意するか否かを回答します。            ↓
「調停条項案」が債務整理の対象にしようとする全ての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所へ特定調停を申し立てます。この場合、弁護士以外は特定調停の場に出頭することはできず、債務者自身が出頭する必要が出て来る場合があります。
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簡易裁判所の特定調停手続により調停条項が確定すれば債務整理が成立となります。


「自然災害債務整理ガイドライン」の利用状況

 

この「自然災害被災者債務整理ガイドライン」による債務整理の利用状況は、まだまだ、一部に限られている様です。2017年6月末時点で登録支援専門家に手続支援を委嘱した件数が692件、 うち、手続中の件数500件・ 特定調停の申立てに至っている件数28件となっており、債務整理成立件数は83件となっています。
一般に「自然災害被災者債務整理ガイドライン」による債務整理が認知されていないこともあり利用状況は低調ですが、二重の住宅ローンに苦しんでいる人は桁違いに多い筈です。今後、この「自然災害被災者債務整理ガイドライン」による債務整理が認知され、自然災害によって住宅ローンの返済に困った人が一人でも多く救われることを望みます。


住宅ローンの「団信」に制度変更、民間生命保険とどっちがいい?
http://diamond.jp/articles/-/144507